こんばんは。
20年近く色々な服を売っていますが、その中でもずば抜けて一番です。
最初は”なんちゅう名前のブランドや笑”って思ってましたが
扱って約2年。(多分2年。)考えが変わりましたね~。
個人的にHERMES的存在よ。とりあえず凄いですわ。
猛暑に鬼厚なTシャツ作ったりしてますが、そこは愛嬌です。
さて、その東大阪繊維研究所の代表が新作の
がっつり説明を書かれています。
そのページへのリンクだけを張ったら一番早いのですが
全部読みながら少しいじって、うちのblogにまとめました。
とりあえず変態な内容です。
そらもう、ド変態です。
・・・・・・・・・・・・・・・・
-冬にリネンを着るにはどうしたらよいか、ということを考えに考えて作ったロンT-
その1.コンセプト編
最初に商品名について。
「リネンウール」というのは文字通り、リネンとウールが使われているという意味で
「長袖Tシャツ」もそのままの意味です。
その間の言葉「モンスターオンス」とは何ぞや?といいますと
これは東大阪繊維研究所が取得している登録商標で、自社の定義として
「生地の重さが12オンス以上を超える極厚のTシャツ及び生地」のカテゴリーになります。
なので「モンスターオンス®」と表記することもありますが
商品名のときは見た目のバランスを考えて®をはずしてます。
名前にモンスターオンスと冠しているのでこのTシャツはかなり分厚いです。
なぜそんなに分厚く作ったのかというと、セーターの代わりになるロンTを作りたかったからです。
今年はちょっと早めに寒くなりましたが、去年までの数年間は11月後半でも気温20度を超えていました。
そんな気候に適したロンTとはどんなものか?と考えたとき
ふと「リネンが活躍するんじゃないか?」というアイデアが浮かびました。
朝晩少し寒くて日中暖かい気候のときには1枚着で
そこから少し寒くなってきたら大きめサイズをシャツの上から着て
ジャストサイズならジャケットのインナーでと想定すると厚手のウールセーターやスウェットなどより
中厚手で暖かく着られるカットソーが重宝するのでは?と思いました。
なおかつ、あくまでTシャツなのでガンガン洗濯できた方が良いし、ジャケットやダウン
革ジャンなどのインナーで着るとしたら汗で蒸れないようにしたい。
それらの要素をまとめるとこんな感じです。
温かく着られる
セーター代わりにシャツの上から着る
ジャケットやダウンのインナーとして着る
洗える
蒸れにくい
上3項目だけなら薄手のウールニットでもOKですが
下の2項目についてはウールが苦手とする分野です。
そこで縮みが起きにくくご家庭で洗濯できる当社のリネンが大活躍するわけです。
ウール=温かい、けどお手入れが面倒。
リネン=寒い、けど蒸れにくく伸び縮みしにくい。
ならばその2素材の長所を組み合わせて
リネンウール=温かくて蒸れにくくてお手入れ簡単
というものを作ろう!ということですね。
一般的にリネンのニットは斜行するという問題があります。
斜行というのは水洗いした後などにニットが歪む現象なんですが、細かい説明はここでは省きます。
この斜行というテーマについて私たちは21年に渡り取んできました。
その結果確立した「ゼロトルク®撚糸」という技術があり
水洗い後に起きる製品のゆがみを抑制することが出来ます。
なのでうちのリネンはガンガン洗えます。
そしてリネン素材にはポリエステルなどの合繊素材を含めて圧倒的に抜きん出た吸水速乾性があって
リネンの衣料品はとにかく蒸れにくくてサラサラです。
元々ドライな風合いでさらさらしている上に水分を飛ばすので、本当にサラサラです。
しかもリネンという素材には伸縮性がない。言い換えると縮みが起きにくい。
これらリネンの特性を生かしつつウールの保温力も活用できる中厚手のロンTがあれば
めっちゃ便利なんじゃないか?と思い立って今回の商品を作り始めました。
実際作り始めてみるとこれがなかなか簡単ではない。
性格の違う2つの素材をそれぞれ生かす生地を作らなければいけない。
さてどうしたものか、という話を次回以降にしていきたいと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・
プレーティング編みというのをやってます。
-冬にリネンを着るにはどうしたらよいか、ということを考えに考えて作ったロンT-
その2.生地編
生地について書きたいと思います。
リネンウールと書いているとおり、このロンTにはリネンとウールが使われています。
ではどうやって使われているのか?といいますと
表側がリネン裏側がウールになるように生地を作っています。
とりあえずこの写真をご覧ください。
表側の青い部分がリネン、襟のところに見えている内側のグレーの部分がウールです。
写真では分かりにくいですが、よく見ると表のブルーの部分に
裏のグレーの糸がほんの少しだけ顔を出しています。
デニムみたいな霜降り調でなかなか良い雰囲気です。
表と裏に別素材を配置するこの編み方を「プレーティング編み」と言いまして
プレーティング編みは表にメインの糸を配置して、裏に極細のストレッチ糸を配置することで
伸縮性のある生地を作るのによく用いられる技法で、実は世の中の靴下のほとんどがこの構造になってます。
しかし今回のうちの商品は表がリネンで裏がウールでどっちも主役級。
その1の最後の方でも書きましたが
この個性の強い2つのキャラクターを組み合わせるというのがなかなか厄介なんです。
ウールの生地は柔軟剤を入れて仕上げるのが一般的です。
しかしウールの風合いを良くするための柔軟剤はリネンの持つ天然の糊成分(ペクチン)を
溶かして毛羽立たせてしまい、自然なツヤと独特のサラサラ感を損なってしまいます。
反対に何も仕上げ剤を入れないとウールのふかふか感が出ないので温かみが損なわれます。
これをどう解決するか?ということで生地メーカーさんと知恵を出し合って
柔軟剤やその他の薬剤を使うことなくふくらみを出す仕上げ方法を考えて試験してみました。
実際やってみたところリネンは毛羽立たずサラサラ感やツヤはそのままに
ある程度膨らみのある生地に仕上がったので、本番もその方法を採用しました。
なのでこのロンTはリネンの持ち味を生かすことを重視して
ウールの柔らかさやふくらみはちょっと抑え気味で仕上げています。
しかし、これは言い換えるとウールにはまだこれからふくらみが出て
柔らかくなっていくポテンシャルがあることを意味しています。
じゃあどうやって柔らかくしていくのか?とても簡単です。どんどん着てガンガン洗ってください。
その際、出来れば中性洗剤で洗って平干ししてもらえれば大丈夫です。
アタックなんかの弱アルカリ性洗剤はウールを少しずつ劣化させていくので中性洗剤をお勧めしてます。
生地がかなり分厚くて重たいロンTなので
吊り干しだとハンガーが当たっているところが伸びてしまうかもしれない
というのが平干しをお勧めする理由なので上手にやれば吊り干しでも大丈夫です。
洗えば洗うほどウール糸の毛が絡み合って膨らみと弾力が増していきます。
リネンについては洗うほどに毛羽が出て光沢も落ちていきますが、その分しっとりと柔らかく変化していきます。
ウールにふくらみが出てリネンが柔らかくなっていくので
より一層冬物として適した風合いに育っていきますよ。
・・・・・・・・・・・・・
良いTシャツは良い糸がないと作れません。
-冬にリネンを着るにはどうしたらよいか、ということを考えに考えて作ったロンT-
その3.リネン素材編
その2は生地についてリネンが表にウールが裏に使われていますよということを書きました。
今回はそのリネンについて書きます。今回使用しているリネン糸にはフランスのノルマンディ地方の企業テレデラン社から供給されるフラックス原料を使用しています。
フラックスというのはリネン糸の原料になっている植物の名前で、リネンという名詞はあくまでも糸として紡績された後の状態(生地や製品など)に与えられるものです。
なので、実は「フラックスという植物でリネン糸を作る」というのが正しい言い方でリネンという植物があるわけではないです。しかし今回はそのあたりの細かい話は割愛します。
このフラックスを栽培しているのがフランスのテレデラン社でこれはノルマンディ地方のフラックス農家が数件集まって共同経営している企業体です。テレデランをフランス語で表記するとTerre de Linで「リネンの大地」というような意味になります。
自分たちが育てた農作物にプライドを持っていてそれをブランディングするために共同経営会社を運営しているわけです。
私たちのTシャツにはそのテレデラン社が提供するフラックス原料の中でも一等亜麻正線(いっとうあましょうせん)という最も上質とされる部位だけを使って紡績された糸を使っています。
一等があるからには二等もありまして、二等亜麻は一等に比べて繊維が粗く太い糸を作るための原料だと思ってもらえば良いです。
その下にはさらに繊維の粗い再用綿とか落ち綿とか呼ばれるものがありこちらはコットンやポリエステルとブレンドして使われることが多いです。
このようにいくつかのランクがある中で一番繊維が細くて長く質の高い原料が一等亜麻で肌の敏感さにもよりますが一等亜麻を使えばチクチクしない糸が出来ます。
そのフラックスを中国に持ち込んでリネン糸に紡績しています。中国製は品質が低いと想像する人もいまだにいますがリネン糸の紡績に関して後発である中国には最新の設備を導入しているメーカーも多く高品質なリネン糸を製造している企業が多数あります。
特に上質なリネン糸を紡績するために必要な潤紡績(ウェットスピニング)について日本国内にはもう設備がありません。
潤紡績(ウェットスピニング)は毛羽を抑えてリネンに光沢とドライな肌触りを与えるために必要な紡績設備です。
かつては旧帝国製麻(今の帝国繊維)が北海道に設備を保有していましたが今は全く残っておらず、潤紡績のリネンについてはほぼ中国の独壇場のようになっています。
なので、世の中にある「フレンチリネン」のほとんどが中国で紡績されていて一番最初に書いたルールを元に言い直せば本来は「フレンチフラックスを使用したチャイナリネンた糸」と表記すべきものだったりします。
これについても言いたいことは山ほどありますが、ここではやめときます。
それはともかく、当社ではテレデラン社の上質な一等亜麻原料を中国の最新設備で紡績した綺麗なリネン糸を輸入し、日本国内で染色+撚糸して糸を仕上げています。
今回はその糸を2色撚り合わせた「杢撚り」という方法で糸を作っています。
この写真では少し分かりにくいかもしれませんが、グリーンの色目は実は濃いグリーンとネイビーを掛け合わせた色になっています。
その他ブルー、ブラウン、グレーもそれぞれリネン自体が杢撚りになっていてなおかつ裏に編まれている別色のウールが表側に少し出てくるので結果的に表面には3色の要素が霜降り調に混ざり合います。
これによって深みのある色の表現が出来るのです。そして最後にサラッと書きますがこのリネン糸はよじれを止める「ゼロトルク®撚糸」という技術で水洗いした時の製品の型崩れを防いでいます。
ということで、今回のロンTに使用しているリネン糸についてまとめるとこんな感じです。
フランス産の一等亜麻原料を使用しています潤紡績の糸なので毛羽が少なく光沢があります2色の杢撚りでメランジトーンを出していますゼロトルク撚糸で型崩れを防ぎます
上質な原料と確かな技術で良い糸を作っているから良いTシャツが出来上がるということです。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「HOFI-016 リネンウールモンスターオンス 長袖Tシャツ」についてしつこいほど説明するシリーズ今回はウールについて書きたいと思います。 その4
この生地は表がリネンで裏がウールになってます。コーディネイトとしては冬にリネンを楽しんでもらいたいけれど、やっぱり寒いからウールが着たい。
この両方を叶えるためにこの組み合わせでプレーティング編みにしています。この写真でいうとグリーンの部分がリネンでチャコールグレーの部分がウールになります。
ウールのインナーTを着てリネンの長袖Tシャツを着るというのが1枚にまとまっているので重ね着してもゴワつかないしスタイリングも綺麗にまとまります。
ということで今回はその内側に使われているウールについて。
当社のリネンは水洗いしても型崩れしないように「ゼロトルク®撚糸」の技術で作られています。せっかく洗えるリネンを使うのだからウールも洗えないと意味がないのでこのウールには防縮加工が施されています。
ウールの防縮方法にも色々と種類がありまして、このウールには酵素を使った加工がされています。防縮加工とは何ぞや?という方のために簡単にご説明いたします。
ウールのニットが洗濯で縮むのは、羊毛が水を含むと表面にあるスケールとよばれるウロコのようなものが開き、そのウロコ同士が引っかかって絡まってしまうことが原因です。
縮みの原因となるこのスケールを塩素などの薬品を使用して除去したりちょっとだけ溶かしたりするのが従来の防縮加工です。
しかしスケールを除去してしまうと縮みにくくなる反面、撥水性能やふくらみが失われてしまいます。
繊維にふくらみがあると糸に空気の層が出来やすく保温効果が高まるので防縮加工によってウールニットの温かさが損なわれるのはもったいない気がします。
当社で今回使用しているウールは塩素を使わず酵素でスケールを改質した上でさらにシルクプロテインを結合させているので、ウール本来のふくらみを保ちながら肌にチクチクせずしかも洗濯しても縮まないという優れた性能を持っているのです。
簡単に言えば、洗えてふっくらしていてチクチクしないウールなのです。
表側のリネン同様に洗える仕上げになっているのでこのロンTはガンガン洗えます。
冬場セーター代わりに着るのであれば実際はそれほど頻繁に洗わないかもですが秋の立ち上がり時期に1枚着として着ると考えるとこの「洗える」という要素はかなり大事なんじゃないかと思っています。
このウールについてはお手入れのしやすさだけじゃなく風合いのよさも自信があります。
今回使用している原料はオーストラリア産のメリノウールの18.5マイクロンです。
「18.5マイクロンです」と言われてもイメージしにくいかと思いますが一般的にエクストラファインメリノと呼ばれているウールが19.5マイクロンなのでそれよりもさらに1マイクロン細いです。
だから何なんだ?といわれてしまうとそれまでです。笑
実のところ私自身もウールのマイクロンが19だろうが18だろうがそんなことはどうでもいいことだと思っております。
ともかくなかなか上質な原料を使用しているので肌触りが柔らかくて弾力もあるウールだと思っていただければ十分です。
防縮加工を施す際にシルクプロテインを結合しているというのもありますがそれがなくてもこのマイクロンのウールは全然チクチクしません。
ということで、今回使用しているウールの特徴をまとめるとこんな感じです。
酵素防縮加工を施しているのでご家庭でお洗濯できます繊維の細い柔らかなウール原料を使用しているのでチクチクしませんふくらみがあって保温性の高いウールです
リネン同様かなり質の高い原料を使ってお手入れしやすいように加工をしてあるので「上質を気軽に着る」ことが出来るようになっているのです。ということで今回はウール原料について書きました。次回はデザイン編です。
・・・・・・・・・・・・・・・
シルエットはスッキリと、カラーは遊び心満載で。-冬にリネンを着るにはどうしたらよいか、ということを考えに考えて作ったロンT-その5.デザイン編
リネンウールのロンTを作ろう!と思い立って最初に取り掛かったのは色作り。冬に着るリネンというコンセプトうんぬんはともかく、見た目がカッコよくなければ服としてお役に立たない。
パッと見だけでいうとリネンの魅力は発色の良さにあるので「ここは一つ納得いくまで色目を作りこんでみよう!」と意気込んでみました。
色の表現として狙ったのは紡毛ウールのようなメランジトーン。しかもイタリアのウールというよりはブリティッシュウールの雰囲気。
今回はリネン糸を2色で構成し、そこに裏糸のウールを加えているので合計3色のミックストーンを作ることが決まっている。
表側のリネンは同じ太さの糸を2本撚るので50:50のブレンド比率になる。そこに裏糸のウールがチラッとだけ顔を出す。(なんとなく直感的に表側に5%くらい顔を出すイメージ)
これを元に沢山試作した結果今回出来上がったのがこの4色。
・ブラウンはリネンをややグレーがかったこげ茶色と赤みのあるテラコッタ系のブラウンで撚り合わせてそこにカフェオレっぽいブラウンベージュのようなウールがチラッと見えるようにしてます。・グリーンのリネンはビリジアンをもっと濃くしたような青系のグリーンにウルトラマリンと呼ばれるやや明るめのネイビーを組み合わせ、チャコールグレーのウールを裏に。
・ブルーのリネンはグリーンと同じウルトラマリンにややくすんだトーンの濃い目のブルーを撚り合わせて中濃度のグレーのウールを裏に入れてます。・グレーのリネンには中農度のクロムっぽいグレーとかなり薄いシルバーグレーを濃淡で撚り合わせてちょうど撚り上がったリネンと同じくらいの濃度のウールを裏に足してます。
リネンにはナチュラルなツヤがあるので最初はそれを楽しんでもらって、着ていくうちに毛羽立ってきて色が馴染んでくるのでそこの経年変化も味わってもらいたいと思っています。
色の組み合わせが決まったところでシルエットとディテールを決めていきますが実はこのロンTの基本的なデザインはうちのコットン100%の定番品「HOFI-011 インド超長綿 タック襟長袖Tシャツ」とほぼ同じです。
脇から裾にかけてやや絞ってあるややタイト目なシルエット。リネンのシャープな風合いと艶のある発色を冬のコーディネイトに加えて欲しいと思っているので秋の立ち上がり時期には1枚着で、その後はジャケットやカーディガンのインナーとして着たりシャツのアウターとしてセーター代わりに、という感じで着てもらえると良いかと。
インナーのウールとアウターのリネンを1枚にまとめたようなロンTで今風のオーバーサイズなシルエットではなくタイト目に作ってあるので重ね着のときにとてもお役に立ちますよ。
ではよろしくです!!
HOFI-016 リネンウールモンスターオンス 長袖Tシャツ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・